自分を軸に。自分を知る
自分の棚卸し
まずは「自分がやりたいこと・好きなこと」「自分が得意なこと」「人脈」の観点から「自分の棚卸し」をしましょう。
特に人脈の棚卸しは今後のビジネス展開の面で重要です。
自分の棚卸し
まずは、自分の棚卸しをノートに書き出してみましょう
まずは、自分がやりたいこと・好きなことを突き詰めて考えてみましょう。童心に帰って。情熱的に。夢想しましょう。
自分のキャリアを軸に、得意なことを突き詰めて考えましょう。夢想することは悪くありませんが、こちらはあくまで現実的に。
自分の交友関係を掘り起こし、データベース化しておきましょう。思わぬつながりが見つかるかもしれません。
やりたいこと・好きなこと
人生100年時代の生き方:
シニア金融マンの皆さんは、これまで高給・安定した生活と引き換えに、“やるべきこと”に邁進してきました。会社でこなしてきた様々な業務は、会社にとって、ひいては社会にとって必要な仕事だったはずです。
その一方で、必ずしもその仕事はあなたがやりたかった仕事ではなかったかもしれません。
そして現在、デジタル化した新しい形態の決済手段や資産の誕生、あるいはDXやAIによる省力化を背景に、これまでの金融の仕事が大きく変わりつつあります。
残念ながら、金融機関がこれから求める業務・仕事は、これまで皆さんがこなしてきた仕事とは違うものになりそうです。
これから、副業・独立を目指す人、副業・独立が自然と必要になる人が増えていくでしょう。
そのためには、自分を変える必要が有ります。
今や「人生100年時代」です。
これから副業・独立するなら、それはあなたにとって「最後の仕事」になるかもしれません。
ならば自分がやりたいこと・好きなことをやるべきです。
ゼロベースで考えよう:
皆さんはこれまで金融という業界の中でそれぞれの専門性を高めてこられました。
でも、だからと言って、副業・独立の対象を金融関連ビジネスに絞る必要はありません。
「こうでなければ」は捨て、ゼロベースで考えましょう。
なりたい自分は? 夢は?:
小さいころからの夢、集めてきたコレクション、育った地域への貢献など、これまで自分が「好き」を原動力に培ってきたことは何でしょうか。
あるいは、これまで忙しさにかまけてトライしてこなかった「好き」なことは何でしょうか。
自分が主人公の物語を思い描いてください。
「自分とは?」を問うことは、意外と難しいことです。
当然「なりたかった自分」に誰もが簡単になれるわけではありません。
それでも、あくまでコアに”fun!(楽しい)”を位置づけるべし、ということです。
子曰、知之者不如好之者、好之者不如楽之者
=子曰く、これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず
(物事の知識がある人であっても、好きな人にはかなわない。さらに、好きな人であっても、それを楽しんでいる人にはかなわない)『論語』より
例えば、趣味のブログを続けることで、それがビジネス化するケースもあります。
コアに”fun!(楽しい)”を位置づけることは、まず何より大事です。
妄想力を大事に:
これからの世の中に必要な力は、過去を引き延ばして考えるのではなく、これから世の中がどうなるかを予測したり、どうなれば楽しい世の中になるかを夢想したりする力です。
いわば「妄想力」ともいえる力です。
そのために、世の中で何が起こっているのか常にアンテナを張り、それらに対し自分なりの意見を持つよう習慣づけましょう。
情報発信の時代:
そして、自分なりの意見を「発信」する場をもちたいものです。
皆さんの中で、FacebookなどSNSで(仲間内のコミュニティ以外で)、第三者に向けて自分を「発信」している人はどれだけいらっしゃいますか?
ブログに自分の意見を書いて不特定多数の読者に向かって主張を続ける。YouTubeで趣味の楽器演奏の動画を配信する、などでも結構です。
これからは、そのように自分自身を掲げて、発信することがより重要になります。発信は匿名でも構いません。
(ただし、誰かを貶めるような内容や、攻撃的な書き方は避けましょう。今は誰もが発信者になる代わりに、誰もが社会の生贄にされる世の中です。)
これは別に、その発信が収益につながるとか、直接副業の種になる、と言いたいわけではありません。
今の時代、Noteなどで自分の意見発信を収益化するメディアが有りますし、YouTuberやTikTokerらは動画を作り再生回数をバズらせて広告収益で稼いでいます。ですが、生活の基盤になるほど稼げる人はほんの一握りです。
それでも、個人単位で手軽に世界に向けて情報発信ができるプラットフォームがあることを認識しておくことが大切です。
「アウトプットする習慣」を持つことが大事なのです。
それにより、まったく知らない人からアプローチを受け、つながりが生まれる、ということも期待できるかもしれません。
組織の中に個性を埋没させる時代から、個を軸につながっていく時代に、世の中はすでに大きく変わっているのです。
得意なこと
「得意なこと」「人脈」で「好き」を微修正:
コアに”fun!(楽しい)”が有るのが理想とは言え、多くの人は、「好き」がそのまま自分の強みというわけではないでしょう。
これまで培ってきたことは大事です。
最後の仕事になるかもしれないから、「好き」をベースにしましょう、と書きました。
「好き」をベースにするために、これまで培った「得意なこと」「人脈」を利用できないか考えましょう。
資格は得意の成果:
金融マンとしてこれまで培った知識・技術・ノウハウは貴重です。
これまで普通に金融マンとして生きてきて、以下のような資格を取ってきたことと思います。たかが資格、されど資格。業務に必要な資格があることは他業種にはない強みです。
-証券外務員
-生命保険募集人
-損害保険募集人
-内部管理責任者
もちろん、FP関連資格や証券アナリスト資格などもう少しプロフェッショナルな資格や、簿記などの有用性の高い資格はより価値が有ります。
シニア起業は「ハイブリッド型」:
ただ、資格だけが得意を表すものではありません。
仕事にかかわらず、自分が得意なことは何か、探して見てください。
調整力やリーダーシップなど、これまでの会社生活で発揮してきた得意分野があるはずです。
もっと端的に、具体的なスキルであっても構いません。
あるいは、仕事とは関係なく長年続けてきた趣味やアピールポイントがあるかもしれません。
そして、少し角度を変えて「こういう応用が」を考えてみるといいでしょう。
シニア起業は「ハイブリッド型」と言われます。自分のキャリアと「何か」を掛け合わすことで実現しやすいといいます。
そこで大事なのが、人と違う点を見せられることです。
これまでやってきたことと同じことをするのではなく、それに自分が持つ「得意」な点を反映させる形で事業ができないか考えてみてください。
人脈
袖すり合うも他生の縁:
人脈は大事です。「袖すり合うも他生の縁」と言いますが、思わぬ関係性からビジネスに発展することもよくあることです。
事業を営む上で大事なのは「自分に何ができるか」ではなく、「誰が何をできるか」を知っていて、かつ、その人と繋がっている、ということです。
よく、人脈というと、「親しい」仲でなければいけないものと思いがちです。
ですが、ビジネス上の人間関係というのは、友人関係とは別のものです。親しい間柄でビジネスができればそれがベターですが、むしろ、ビジネスでしかつながらないドライな関係の方がうまく行くこともあります。
一般的に言うと、同質的なジャンルの人とつながっても、ビジネス面で開けることはありません。自分より若い世代の人、まったく違う人生を歩んできた人、違う国の人など、「自分とは違う」人々とどれだけ広くつながれるかが大事だと思います。
今、大企業の技術者が埋もれた技術で起業する、というケースが増えています。自分とは別ジャンルの、そういう事業パートナー候補を見つけられれば理想的です。
そういった、まったく違う世界の人と繋がるには、自分から発信をしなければなりません。また、それを継続することが必要です。
自分が「何がしたい人間なのか」「何ができる人間なのか」を発信し続け、誠実で信頼できる人物であると思ってもらう必要が有ります。
そして、いろいろな他ジャンルのニュースに興味を持ち、それについて最低限の会話ができるレベルの状態に自分をもっていかなければなりません。
世の中で起きている変化や仕組みについて、“多少知っている”程度でもいいので、絶えず勉強していましょう。
そして、わからないことは聞きまくること。
我以外皆我師也=われいがいみなわがしなり
(自分以外のものはすべて私の師である)吉川英治
です。
Giverを目指す。Takerから距離を置く:
ビジネスにおいて最も大切なものは、結局のところ「信用」「信頼」です。
多くのシニア金融マンの方々の信用・信頼の源は、所属する会社の信用・信頼であり、そこに所属する「肩書」でした。
厳しい言い方をすれば、それ以外に信用・信頼を得る手段がない人も少なくないのではないでしょうか。
独立して社会的に信用される金融マンの肩書を失うことは、かなり深刻なことです。
それでも、これから変化する世の中に果敢にチャレンジしなければなりません。
誰かの信頼を得るには、何らかのメリットを提供できる存在(Giver)になることです。
これは一見、“持たざる者”にとっては難しいことかもしれません。
しかし、些細なことでも誰かを助けたり、親身になって話をしたりする。与えられたことに感謝して、いずれお返しをしようと心に期する。こういった“自分本位でない”姿勢を持つことが、自分をGiverにし、信頼を生むのです。
一方、世の中には、他人から何らかのメリットを享受することのみを考える人(Taker)が少なくありません。
世の中は「弱肉強食」であると心得て、人を騙しても利益を得たい、相手より優位に立ちたい、と考える人が少なくないのは事実です。肩書や社会的信用にかかわらず、そういう思考の人や企業は一定数存在します。
相手がそういう人物や組織だとわかった場合、すぐにでも距離をおくべきでしょう。
ビジネス上、どうしても彼らとの関係が切れない、という場合は、なるべく第三者的な「味方」を見つけておくべきです。
そういった味方を得るのも結局、自分の信用・信頼あってのことですから、やはりGiverを目指す、Giverを心がけることは大事です。
人脈はデータベースに:
今の世の中、GAFAMはじめどの企業も、個人データを収集し解析し、商売に活用しています。皆さんがいる金融ビジネスも、個人の決済情報や問い合わせ情報などの各種データが経営判断の根源にあります。
言わずもがなですが、自分を軸にビジネスを始めて行こうとする場合、人脈はきちんとデータベース化するべきです。
これまでビジネス以外で得てきた名刺からの情報、友人など交友関係、SNSでつながる人たちなど、一つのデータベースにまとめておくといいでしょう。
このデータベースにいる一人一人が、将来の顧客候補にもビジネスパートナー候補にもなり得ます。
なお、営業マンが会社の仕事で得た顧客情報を持ち出して自分の新しい事業に使うのは法令違反です。
独立して始めるビジネスが前の仕事と同種のものであれば、トラブルの種になるので気を付けましょう。
データベースは、Microsoft ExcelやGoogle Sheetsなどの自作レベルで構いません。
いずれ、MA(マーケティングオートメーション)のクラウドサービス利用など、将来的に発展していくことになります。
交流会・勉強会は有益。でも、ほどほどに:
なお、他業種交流会や様々な勉強会に参加して、そこで人脈を得るのも有効です。
今はリモートでの勉強会が多いですが、それでも、いろいろなジャンルについて勉強し、主催者などにアプローチして、積極的につながりを持つようにしたいです。
ただし、あくまでも交流会や勉強会は、「あわよくば」いい出会いが有れば、という程度の軽い期待で参加するべきでしょう。
むしろ、特に勉強会の場は、自分のビジネスを主張するより、様々なことを学び、自分自身のバリューを上げるために上手に活用しましょう。